翻訳アプリ、結局使えていますか
翻訳アプリが効くのは、注文の受け答えと、料理の中身を聞かれたときの2つだけです。
先に進めずにいる原因は、アプリの性能ではなく、どの場面で出すかを決めていないことにあります。
食べられないものの確認と、カードが使えない会計は、訳文をどれだけ正確にしても答えが出ません。
ここでスマホを出すと、確認と支払いの両方が遅れます。
場面ごとに「出す」「出さない」を先に決めておくと、迷っている時間がなくなります。
出す場面の決め方は、私がツアーでどう出しているかがそのまま参考になります。

基本的には、お客様のほうへ画面を向けて見せています。英語に癖のある方や、耳の聞こえにくい方は、ご自身でも翻訳機をよくお使いになります。私の英語が届かないときにも出しています。
出すのは、相手が先に翻訳画面を出してきたときと、こちらの言葉が届いていないと分かったときです。
この2つ以外は、まずメニューと指で足りないかを先に考えます。
飲食店の英語接客で使う翻訳アプリの種類
翻訳のツールは、音声・カメラ・文字という入力の仕方で3つに分かれます。
選ぶのはアプリの銘柄ではなく、その場面に合う入力の仕方です。
同じアプリのまま入力を切り替えれば足りるので、複数のアプリを入れる必要はありません。
| 入力の仕方 | 向く場面 | つまずくところ |
|---|
| 音声 | 相手が長めに話したとき | ・厨房の音と話し声が重なると拾えない |
| カメラ | 紙のメニューや張り紙を訳すとき | ・読み取るのはお客様の端末なので、店側で操作する場面は少ない |
| 文字 | 注文の受け答えのような短い文 | ・打つ手間がかかる |
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音声で入れる|相手の話を訳すときに使う
音声は、相手が1文以上まとめて話したときに使います。
こちらが話すために使うより、相手の話を受け取るために使うほうが早く終わります。
短い返事をこちらから返すだけなら、打ったほうが確実です。
カメラで写す|紙のメニューや張り紙を訳すときに使う
カメラは、日本語のメニューしかない店で、お客様の側から使われる機能です。

私自身が店で使うことはあまり多くありませんが、日本語のメニューしかない場合は、翻訳アプリのカメラで日本語のメニューをかざすことが多いです。最近のアプリは精度が高いので、縦書きでも手書きの札でも、たいていは正確に読み取ってくれます。
読み取る側が何とかしてくれる以上、店側でやることは、読み取られる前提で紙を整えることだけです。
店として用意するなら、品名の字を大きくしておくほうが手が少なくて済みます。
文字で打つ|短い受け答えはこれがいちばん確実
注文の受け答えで使うのは、ほとんどが文字入力です。
短い文なら、無料のアプリから出てきた英文をそのまま使えます。

飲食店で使うような短い受け答えなら、機械翻訳から出てきた英文をそのまま使えなかったことはありません。長い文章を書かせると、指示を足さないかぎり当たり障りのない文になります。
専用の翻訳機と、多言語メニューを作るサービス
専用の翻訳機は、端末をもう1台持つ形になります。
注文の受け答えだけなら、いま持っているスマホで足ります。
ツアーで入った店でも、相談を受けた店でも、専用の翻訳機が置いてあるのを私は見たことがありません。
多言語メニューは、自治体が飲食店向けの作成支援を出していることがあります。
東京都のEAT TOKYOは、都内の飲食店向けに12言語の多言語メニューを無料で作れます。
店名と電話番号を入れるだけで登録できます。
自分の都道府県名と「多言語メニュー 作成支援」で調べると、同じような配布元が出てくることがあります。
google翻訳のオフライン設定と言語のダウンロード
英語のデータを端末に入れておけば、電波の届かないところでも文字の翻訳が使えます。
開店前に一度やれば終わる設定で、営業中に触ることはありません。

私自身は、海外旅行のときにダウンロードしたことはありますが、実際に使ったことはありません。心配なら事前に入れておいたほうがよい、という程度です。
つまり、毎日使うツールではなく、入れておくと安心という備えです。
開店前に釣り銭を用意するのと同じで、必要になってからでは間に合いません。
英語をダウンロードする手順
1Google翻訳のアプリを開き、右上のボタンを押す
押すのは、翻訳する画面ではなく、右上のアカウントのボタンです。
2「ダウンロードした言語」を選ぶ
履歴や設定と並んでいる項目です。
3言語の一覧から英語を選んでダウンロードする
英語を1つ入れれば足ります。先に何か国語も入れると、端末の空きを使うだけになります。
4機内モードにして、自分の端末で試す
ダウンロードが終わったら、機内モードにして短い文を訳してみます。
ここで動くところまで確認して初めて、当日の備えになります。
手順の細かい画面は、Google 翻訳ヘルプ「オフラインで翻訳する」に載っています。
オフラインでできること・できないこと
オフラインで何が使えるかは、言語と端末で変わります。
Google翻訳のヘルプには「言語をダウンロードすると、デバイスのカメラを使用して翻訳できるようになる場合があります」とあり、カメラが使える言語は別に確認するよう案内されています(Google 翻訳ヘルプ「オフラインで翻訳する」)。
だから、手順3の機内モードで自分の端末を試したときに、動いたものだけを当日使うツールにします。
翻訳アプリが向く場面と、向かない場面
同じアプリでも、場面によって使えたり使えなかったりします。
向かない場面を先に知っておくと、そこで粘らずに紙へ切り替えられます。
騒がしい店内|音声をやめて、文字入力に切り替える
音声が拾えなかったときは、同じことを大きな声で言い直さず、その場で文字入力に切り替えます。
二度うまくいかなければ、その時間帯に音声は向いていないと考えて構いません。
厨房の音と話し声が重なる時間帯は、マイクが相手の声だけを拾えないからです。
音声が拾えないときに切り替える順番
1文字入力に切り替える
同じ内容を打って、画面を見てもらいます。
2メニューを指してもらう
品名が決まっている話なら、これがいちばん速く終わります。
3iPadの注文画面を英語に切り替える
タブレットで注文を受けている店なら、翻訳アプリより先にこちらを試します。
騒がしさは、その場で消せるものではありません。
時間帯によって翻訳に使うツールを変えることも1つの手です。混み合う時間は最初から音声を使わず、文字入力か紙のメニューで受けると決めておきます。
画面をお客様に見せるときの向きと距離
スマホの画面は手渡さず、こちらで持ったまま相手のほうへ向けて見せます。手渡すと、返してもらうまで次の注文を受けられないからです。
訳文を出す前に、注文に関係のない画面は閉じておきます。
料理名|会話の翻訳より、単語で調べるほうが速い
実際に聞かれるのは「これは何か」という料理の中身です。
会話を丸ごと訳すより、その料理名だけを単語で調べて答えるほうが早く終わります。
1品につき1語なので、覚えてしまえば二度目からは調べる必要もなくなります。
会話ではなく、料理名だけを打ち込む
翻訳アプリに文章を打つと、訳すのに時間がかかり、返ってきた英文も長くなります。
料理名だけを打ち込めば、返ってくるのは1語か2語で、そのまま口に出せます。

居酒屋で出した魚の名前を聞かれたとき、私も英語が分からなかったので、その場で翻訳アプリにかけて、出てきた画面をそのままお見せしました。魚は普段口にしない方が多いので、気にされるのだと思います。
言葉で言い切れないときは、画面を見せてしまえば終わります。
ただし、同じ料理で二度これをやるくらいなら、書いてしまったほうが速く済みます。
写真と一言の説明をメニューに足すと、聞かれる回数が減る
同じ料理を二度聞かれたら、その場で答えるより、メニューに書いてしまうほうが速く済みます。
写真と英語の品名、それに1語の説明を足すだけで、聞かれる回数が減ります。
書き足す順番と、説明にどこまで書くかは、こちらの記事にまとめています。
アレルギー|訳した文をそのまま伝えてはいけない
食べられないものを聞かれたときは、翻訳アプリが出した英文で答え切らず、厨房に確認して分かったことだけを英語で伝えます。
翻訳アプリは、こちらが打った日本語をそのまま英語にするだけです。
料理に何が入っているかを厨房に確認しないまま「入っていません」と打てば、確認していないことが確認済みの答えとして相手に届きます。
良い例は、訳した文ではなく確かめた事実を返しているので、出せる料理と出せない料理をその場で分けられます。
宗教上の理由で食べられないものを聞かれたとき

私が受けてきたのは、宗教上の理由で豚肉・牛肉・生の魚が食べられないお客様でした。肉の種類はこちらから店員に確認してから注文しています。インドから来られた方は食べられないものの制限が多く、苦労しました。
聞かれた肉の種類は、その場で答えずに厨房で確かめてから返します。同じ「食べられない」でも、宗教上の制限とアレルギーでは確認する範囲が変わります。
だし・醤油・味噌は原材料表示を確認する
だし(Dashi broth)・醤油(Soy sauce)・味噌(Miso)の中身まで確かめて判断するのは、その場では難しいところです。製品によって原材料が違うので、瓶や袋の表示を見て分かる範囲に留めます。
アレルギーの表示については、消費者庁「アレルギー表示について」に特定原材料の内訳が出ています。
外食のメニューが表示義務の対象になるかどうかは、所轄の保健所か消費者庁に確認してください。
英語で何をどこまで書くかは、次の記事で詳しく説明しています。
カードが使えないとき|翻訳では解決しない
会計で手が止まったとき、原因が言葉ではないことがあります。
海外で発行されたカードは、暗証番号を入れる場面で決済できないことがあります。
カードが通らないのですから、ここで翻訳アプリを出しても支払いは終わりません。

海外発行のカードが暗証番号のところで通らない場面は、私も何度か見ています。そのときは、英語でお客様ご自身が店員とやり取りしていました。身振りで何とかなる場面です。
長い説明は要りません。
要るのは、店員がその場で口に出せる短い一言だけです。
暗証番号で通らないときに伝える一言
伝えるのは「もう一度カードを差し込んでください」と「別のカードか現金はありますか」の2つだけです。
英語なら "Could you insert your card again?"(もう一度カードを差し込んでください)と "Do you have another card, or cash?"(別のカードか現金はありますか)で足ります。
この2文は紙に書いてレジに貼っておけば、翻訳アプリを出す必要がなくなります。
現金を用意して来ているお客様が多い
日本には現金しか使えない店が残っていることを、お客様のほうが知っています。カードが通らなかった場面でも、たいてい日本円の現金が出てきます。

私がツアーで連れて行くのは日本語のメニューしかない店が中心で、現金のみの店も多いのですが、それで支払いができなかったことはありません。
両替はコンビニやホテルで、と案内する
万が一カードが使えず、しかも現金が足りないと言われたときは、コンビニやホテルで両替できることを伝えましょう。
海外発行のカードが使えるATMは、セブン銀行「海外発行カードで日本円が引き出せるATM」とゆうちょ銀行「海外発行カードでのATM利用」に対応ブランドが出ています。
店から近い1か所を先に調べておけば、その場で調べずに答えられます。
混雑時|英語メニューと指差し会話シートのほうが速い
行列ができている時間と入口では、スマホを出さないほうが早く終わります。
翻訳アプリは、席に着いたあとのツールです。
指差し会話シートとは、料理名や「アレルギーはありますか」といったよく使う言葉を日本語と英語で並べて印刷した紙のことです。
お客様と店員が、その紙を指でさして用件を伝えます。
メニューの作り方は 飲食店の英語メニューの書き方、紙のシートの配布元は 指差し会話シートの無料配布元 にあります。
そもそも、翻訳が要る場面は先回りすれば作らずに済みます。

行列で知られる店にご案内するときは、お客様と合流する前に私が受付だけ済ませて、そのまま入れるようにしています。待っているあいだは、翻訳アプリを出す場面にもなりません。
店側でいえば、待ち時間の説明を英語でやり取りするより、先に人数と時間を紙で受けてしまうほうが速い、ということです。
紙とタブレットで先に答えを出しておけば、アプリを開く場面が減ります。
アプリを出さないと決める3つの場面
- 入口 … 人数と待ち時間の確認は、指と数字で足ります
- 行列ができている時間帯の注文 … 1組に翻訳の時間をかけると、後ろがそのぶん待つことになります
- iPadで注文を受けている席 … 英語メニューに切り替えられるので、こちらのほうが速く終わります
先に用意するのは英語メニュー、その次に指差し会話シート
先に手を付けるのは英語メニューで、指差し会話シートはそのあとです。

店頭で指差し会話シートを見かけたことは一度もなく、英語メニューを用意している店のほうが多いのが実際です。多言語対応の相談を受けたときも、日本語だけのメニューでは注文に時間がかかるので、メニューから手を付けるよう勧めました。
シートが効くのは、メニューを英語にしてもなお残る場面です。
配布元と、自店で足す項目を扱った記事があるので、そちらを見てください。
英語の次に用意する言語は、届いた口コミで決める
英語のメニューや案内がひととおり用意できたあと、次にどの言語をそろえるかは、自店に届いている口コミの言語を見て決めます。
口コミを書くのは実際に来た人なので、これは推測ではなく自店の記録です。
数えるのは1回で終わるので、英語のメニューができた時点でやっておきます。
Googleの口コミを言語で数える
次の言語を決める前に、届いた口コミを言語ごとに一度数えておきましょう。印象で決めるより確かです。
Googleビジネスプロフィールに届いた口コミは、日本語に翻訳された状態で表示されることがあります。
数えるときは、翻訳ではなく原文の表示に切り替えて見ます。
直近の分を言語ごとに分けて、いちばん多い言語を次の1つにします。
口コミの言語と、来ているお客様の国はだいたい一致する
数えたわけではありませんが、私が見ているプロフィールでは、英語と韓国語がまとまって届いていて、中国語は少ないという印象です。

ツアーで迎えるお客様も、中華系の方は中国本土からではなく、東南アジアに住んでいる方が多い印象です。口コミの言語と、実際に来ているお客様の国は、だいたい一致していると感じます。
印象で当たりを付けたあとに数えれば、外していないかどうかがその場で分かります。
注文と料理の質問だけアプリに任せ、あとは紙で用意する
翻訳アプリで終わるのは、注文の受け答えと、料理の中身の質問までです。食べられないものは厨房で確かめてから答え、カードが通らない会計は別の支払い手段に切り替えます。
明日から順にやることは3つです。
1開店前にGoogle翻訳で英語をダウンロードする
開店前に一度で終わり、あとで触る必要はありません
2聞き返された料理を英語でメニューに書き足す
特に海外の方々の聞き馴染みがないメニューを重点的に訳しましょう
3カードが通らなかったときの2文をレジに貼る
「もう一度カードを差し込んでください」と「別のカードか現金はありますか」です
迷ったときは、訳せば済む話か、確かめないと答えられない話かで分けます。前者はアプリ、後者は人が答えます。
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