どこから訳すか、決まっていますか
外国人のお客様が月に何組か来るようになって、メニューだけでも英語にした方がよいと考え始めた。翻訳会社に見積もりを取ったら思ったより高く、Google翻訳やDeepLのような無料の翻訳はどこまで信用してよいか分からない。そのまま何日も経っている、という飲食店をよく見ます。
何を英語にして、何を日本語のまま残すかを先に決めると、翻訳の方法も選べるようになります。「英語にしたいもの」の中には、注文が決まらないと会計まで進まないものと、来年まで日本語のままでも困らないものが混ざっています。
多言語対応はどこまで行うか|訳す対象を4つに分ける
訳す対象は、注文が決まるメニュー本体、アレルギーや宗教上の食材の確認、会計や待ち時間の案内、店の由来やこだわりの長文の4つに分かれます。メニュー、アレルギー、会計の案内、長文の順に進めれば、途中で手を休めても、お客様はメニューを見て注文することはできます。
1. メニュー本体|品名と値段から始める
メニューが日本語だけだと、注文の受け答えに時間がかかります。品名と値段が読めないので、お客様は写真を指差すか、ご自分のスマホのGoogle翻訳で一品ずつ調べることになります。

飲食店から多言語対応の相談を受けたときは、まずメニューから手をつけるようお伝えしています。メニューが日本語しかないと、外国人のお客様は注文ができません。注文に時間がかかったり、クレームにつながったりすることもあります。
観光庁のインバウンド消費動向調査(2024年 年次報告書)でも、日本滞在中に役に立った旅行情報として「飲食店」を挙げた方は57.9%で、「交通手段」の68.9%に次いで多くなっています。店頭の掲示を増やしても、席に着いたあとの注文にかかる時間は変わりません。
2. アレルギーと宗教上の食材の確認|英語にする前に、料理の中身を確かめておく
お客様が、その料理に何が入っているかを確かめる場面です。原材料を英語に訳していないと、お客様に聞かれた場面で答えられません。英語にする前に、料理に何が入っているかを店の側で確かめておきます。
3. 会計・順番待ちの案内|紙とアプリのどちらで用意するか
会計・順番待ち・注文数の確認の案内です。これらの案内を訳していないと、店員がその都度、身振りで伝えることになります。紙とアプリのどちらで用意するかを決めておきます。
4. 店の由来やこだわりの長文|後回しでもよい
店の紹介文や、素材や製法の説明です。紹介文や説明を訳していなくても、お客様がご自分の翻訳アプリで読むことが多いので、メニュー本体の英語ができてから訳します。
英語メニューの優先順位|品名と値段を先に訳すのがおすすめ
最初は、品名と値段だけを英語にすれば、お客様は注文する料理を決めることができます。英語メニューの調理法やこだわりの説明は、あとから足しても間に合います。
英語にしても聞き返される料理がある
その料理自体を知らないお客様は、英語の品名を読んでも何が出てくるか分かりません。英語にしたのに聞き返されても、訳し方が悪いとはかぎりません。

ツアーで最も多く聞かれる料理は大根おろしです。居酒屋では、しめさばを見て「これは何?」と聞かれました。ほかにかまぼこ、梅酒も聞かれています。魚の名前は私も英語が分からず、その場で調べて答えました。
英語の一言の説明は、お客様に聞き返された品にだけ足しましょう。皿を見ればどんな料理か分かるものは、品名と値段だけにします。
注文端末が英語に切り替わるなら、紙は要らないことがある
iPadなどの注文端末を導入している店は、紙のメニューを作る前に、注文画面を英語表示に切り替えてみてください。英語表示に切り替えられるなら、品名の英語はすでに登録されています。
英語メニューの1品に何を載せるか、Google翻訳などで作った英語のうち人が直す場所はどこかは、別の記事で紹介しています。
アレルギーの英語表示は、原材料を確かめてから訳す
アレルギーや宗教上の食材の確認は、訳す前に、その料理に何が入っているかを店の側で確かめておきます。原材料を確かめないまま英語だけ並べても、聞かれた場面で答えられません。アレルギーの確認を誤ると事故につながるので、メニューの次に手をつけることをおすすめしています。
アレルギーと宗教上の理由は、分けて聞くとよい
アレルギーと宗教上の理由は、お客様からの聞かれ方も、店の答え方も違います。アレルギーは微量でも症状が出るので、混入の有無まで答える必要があります。宗教上の理由なら、その食材が入っているかどうかを答えられれば済むことが多いです。

ツアーでは、宗教上の理由で豚肉・牛肉・生の魚を食べられないお客様がいました。インドから来られた方は食べられないものが多く、苦労しました。料理に牛肉が入っていないかは、私が店員の方に確認してから注文しています。
店員どうしでは、お客様から聞き取る中身を次のように分けておくと、伝え合いやすくなります。
- アレルギー … その食材が少しでも入っていないか
- 宗教上・信条上の理由 … その食材そのものを使っていないか
表示の考え方は消費者庁の特定原材料から
表示の考え方は、消費者庁が示している特定原材料が基準になります(消費者庁「アレルギー表示について」)。外食のメニューが表示義務の対象になるかどうかは、店の形態によって変わります。所轄の保健所か消費者庁で確認してください。
特定原材料は2026年4月にカシューナッツが加わり9品目になりました。9品目の一覧と英語での書き方、だしや醤油に何が入っているかの伝え方は、アレルギー表示の記事にまとめています。
会計・待ち時間の案内|紙とアプリの使い分け
会計・順番待ち・注文数の確認のように、メニューに印刷できない案内は、同じ文言を毎日使うなら紙に、その場かぎりならGoogle翻訳に任せるのがおすすめです。
| 手段 | 場面 | 使い方 |
|---|
| アプリに任せる | ・一品ずつの料理の説明 ・その場かぎりの相談(席の移動、追加の注文) | 画面はお客様の方へ向けて見せる |
| 紙で用意する | 毎日同じことを聞かれる案内(会計、順番待ち、注文数) | 卓上かレジの前に置いて、指してもらう |
| アプリに任せない | アレルギーと宗教上の食材の確認 | 店の側で中身を確かめてから答える |
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店内が騒がしいときは、Google翻訳の音声入力をやめて、手入力に切り替えています。画面はお客様の方へ向けて見せることが多いです。
紙で用意する案内は、指差し会話シートから始める
指差し会話シートとは、よく使う言葉を日本語と外国語で並べて印刷した紙のことです。言葉を交わさなくても、指を差すだけで用件が伝わります。自治体が無料で配っているものを印刷して、自分の店で聞き返された料理名を書き足せば使えます。
指差し会話シートの無料の配布元と、書き足す料理名の決め方は、次の記事で紹介しています。
店員が口で言う一言は、場面ごとに決めておくと安心
入店・注文・会計で口にする一言は、紙やアプリを取り出す前に、場面ごとに決めておきます。店員が覚える英語は、入店・注文・会計の場面ごとの短い一言だけです。
入店から会計・見送りまでに店員が言う英語は、別の記事に場面順に並べています。
案内表示を多言語にする前に、メニューを英語にする
店頭の掲示で解決できることは、店の場所や入り方が分からないといった、店の外で起きる困りごとです。席に着いたあとの注文の受け答えは、掲示を増やしても変わりません。掲示を作る前に、困りごとを店の外と中に分けておきます。
- 店の外 … 営業しているか、どこから入るか、行列の最後尾はどこか
- 店の中 … 何が食べられるか、何が入っているか、いくらか、どう払うか
店の中で起きる困りごとの多くは、メニューを英語にすれば解決します。店の外の困りごとでも、店の入り方が伝わらないなら、Googleマップの写真と投稿で階段や入口を見せておくと、お客様に早く伝わります。

店が2階にあって分かりにくい場合などは、入店の方法をGoogleマップの投稿や写真で補っています。
行列ができる店で、待ち時間や並ぶ場所をどう掲示するかは、待ち時間の案内の記事にまとめています。
2言語目は、全国の内訳より自店の口コミで選ぶのがおすすめ
英語・中国語・韓国語を必ずしも同時にそろえる必要はありません。英語の次の2言語目は、Googleマップで店に届いた口コミが何語で書かれているかを見て決めましょう。口コミの言語で選ぶと、実際に店に来ているお客様の言語に合わせることができます。
全国の数字で見ると、観光庁のインバウンド消費動向調査(2024年 年次報告書)では、出発前に役に立った旅行情報源の言語は英語が50.3%で最も多く、韓国語24.5%、中国語(繁体字)23.5%、中国語(簡体字)17.1%と続きます。ただ、全国の訪日客の内訳と、自分の店の前を歩く人の内訳は別のものです。

私がサポートしている店では、口コミは英語と韓国語が多く、スペイン語の口コミも届いています。中国語は少ないのですが、中国の方は来られています。東南アジアにお住まいの中華系の方はGoogleマップを使われるので、その方々が中国語で書いてくださることがあります。
Googleマップの口コミを原文の表示に切り替えて、言語ごとに数える方法は、次の記事に書いています。
翻訳にいくら払うか|無料の翻訳で済む文と人が確認する文
必ずしもすべての英文を人が直す必要はありません。店の紹介文のように、AIに店の特徴を渡して出てきた英文を手直しせずに使える文もあります。お客様一人ひとりに向けて書く文と、食べられないものに関わる表示は、人が読んでから出します。
下の表は、メニュー・紹介文・口コミへの返信・アレルギー表示のそれぞれについて、「翻訳をどうするか」と「出す前に誰が確認するか」を分けたものです。人が読むものが決まれば、費用をかけるところも決まります。
| 書くもの | 翻訳 | 出す前の確認 |
|---|
| メニューの品名と値段 | 無料の翻訳で済む | 聞き返されたことのある品だけ説明を足す |
| 店の紹介文・こだわりの説明 | 無料の翻訳で済む | 出てきた英文を一度読んでから保存する |
| お客様一人ひとりへの返信 | 下書きまでは無料の範囲でよい | 人が読んでから出す |
| 食べられないものに関わる表示 | 訳す前に中身を確定させる | 人が読んでから出す |
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AIの英文をそのまま使える文
店の紹介文は、日本語で特徴を書き出してからAIに訳させると、そのまま使える英文が出てきます。渡す情報が少ないと、どの店にも当てはまる文章になります。

紹介文を作ったときは、店の特徴をそのまま渡して英語にしてもらい、出てきた英文をそのまま説明文に使いました。一応確認はしましたが、特に直すところはありませんでした。
良い例は、店の側でしか分からないことを先に決めてから渡しているので、出てきた英文がその店の説明になります。
人が読んでから出す文
Googleマップの口コミへの返信のように、お客様一人ひとりに向けて書く文は、AIに任せると当たり障りのない文章になります。そのまま返信すると、口コミを書いたお客様には、どの店から返ってきた文章か分かりません。
弊社が口コミへの返信まで続けてお引き受けする形は、インバウンド向けMEO・Googleマップ運用のページに書いています。
訳さないと決めるもの|店の由来やこだわりの長文
店の由来やこだわりを書いた長文は、後回しにしましょう。日本語のメニューしかないローカルな店でお客様が喜ばれる場面を、ツアーで何度も見ています。長文を訳さないと決めた分の時間は、Googleマップの写真や口コミへの返信に使うことができます。
日本語のまま残してよいもの
次のものは、今年のうちに英語にしなくても、お客様の注文と会計は進みます。
- 店の由来、創業の経緯
- 素材や製法のこだわりを書いた長文
- 店内に貼ってある日本語の品書き(メニューが別にあるなら)
- 店名
店名は日本語のままでも、Googleマップが英語に翻訳して表示します。
Google翻訳のカメラ機能(メニューにカメラを向けると、画面上で英語に置き換わる機能)は書いてある文字を訳すだけで、何が入っているかまでは出てきません。長文を訳さないと決めても、アレルギーや宗教上の食材を聞かれたら、店で確かめて答える必要があります。
訳さない分の時間は、写真と口コミに使う
外国のお客様がGoogleマップで店を選ぶとき、最初に写真が目に入ります。長文の翻訳をやめた時間は、写真の入れ替えと口コミへの返信に使うと、店を見つけてくれるお客様が増えます。

Googleビジネスプロフィールの設定を終えて店にお引き継ぎしたあと、続けていただいている作業は、お客様へのレビュー投稿のお声がけ、写真の更新、口コミへの返信の3つです。私は必要に応じてアドバイスをしています。
訳す順番を決めて、今日はメニューから始める
多言語対応は、訳す順番を決めて、メニューの品名と値段から始めるのがおすすめです。全部を一度にそろえなくても、メニューが英語になれば、お客様は注文する料理を決めることができます。
この記事を閉じたら、次の3つを1から順に進めてください。
- メニューの品名と値段を英語にする(注文端末があるなら、先に英語表示への切り替えを試す)
- 出している料理に何が入っているかを書き出し、中身が確かめられない品を一覧にする
- 会計・順番待ち・注文数の案内を、紙とアプリのどちらで用意するかを決める
どれを先にするかで手が進まないときは、その案内や説明を訳さないとお客様が注文を決められないかどうかで判断してください。
インバウンド集客でお困りの方はぜひTABICOにご相談ください。